相続税の計算をする時には、遺産総額から基礎控除などを差し引いた課税対象額が基準となります。
基礎控除額は法定相続人の数が一人増えるごとに一定額が加算されますので、単純に法定相続人の数が多いほど遺産総額から差し引ける基礎控除額は多くなります。
また、遺産総額に加算する被相続人の死亡により支払われた保険金や退職金に関しましても、法定相続人が増えるごとに非課税枠が加算されます。
法定相続人として認められている人は、被相続人の配偶者や実子などになりますが、誰かを養子として迎え入れた場合にはその養子が法定相続人に加えられる事があります。
相続における普通養子と特別養子の扱いの違い
養子には普通養子と特別養子と言う区別があります。普通養子は、養子縁組の後も実の親と血縁関係が継続する養子の事を言います。特別養子は、養子縁組の後からは実の親と血縁関係を断絶する養子の事を言います。
普通養子に比べると特別養子の方が養親と深い関係が結ばれる事になっており、相続税の計算をする時には特別養子は実子として扱います。
普通養子は実の親との血縁関係が続くことから、相続税逃れを目的とした養子縁組に利用される可能性が高いので、法定相続人に含められる養子の数は限定されています。
- 法定相続人に含める普通養子の条件
-
- 被相続人に実子がいる場合には、養子が何人いても1人までを法定相続人の数に含める。
- 被相続人に実子がいない場合には、養子が何人いても2人までを法定相続人の数に含める。
通常は血縁関係のない娘の婿などには相続の権利は与えられていませんが、被相続人がどうしても相続させたい場合には養子縁組や遺言によって相続の権利を付与する事が出来ます。
養子にすれば相続税の基礎控除などを有利に出来るので、遺言に比べると利用価値は高いと言う事が言えます。
但し、孫を養子にした場合には相続税を2割増しで納めなければならないと言う決まりがありますので、それぞれのメリットを考えてベストな選択をするようにしましょう。
法定相続人に養子が加わった場合の相続税の比較シミュレーション
相続税は法定相続人の数が増えれば基礎控除額が加算されて節税になりますが、養子などを迎え入れて法定相続人が増えた場合はどれぐらい税額が変わるものなのかを、一定の条件下でシミュレーションして確かめてみたいと思います。
- シミュレーション条件
-
- 平成27年からの税制で計算。
- 遺産総額は3億円。
- 法定相続割合で遺産分割。
- 相続税の税額控除は加味しない。
法定相続人が3人のケース
- 法定相続人が妻・子A・子Bの3人の場合
-
基礎控除額:3000万円+600万円×3人=4800万円
課税対象遺産総額:3億円-4800万円=2億5200万円
相続人 | 妻 | 子A | 子B |
---|---|---|---|
法定相続割合 | 1/2 | 1/4 | 1/4 |
相続税額 | 2860万円 | 1430万円 | 1430万円 |
相続税の総額 | 5720万円 |
法定相続人が4人のケース
- 法定相続人が妻・子A・子B・養子の4人の場合
-
基礎控除額:3000万円+600万円×4人=5400万円
課税対象遺産総額:3億円-5400万円=2億4600万円
相続人 | 妻 | 子A | 子B | 養子 |
---|---|---|---|---|
法定相続割合 | 1/2 | 1/6 | 1/6 | 1/6 |
相続税額 | 2540万円 | 846万円 | 846万円 | 846万円 |
相続税の総額 | 5080万円 |
シミュレーション結果
シミュレーションの結果、今回の条件下では法定相続人が4人の時の方が640万円節税になる事が分かりました。
但し、実際の相続税計算の時には配偶者の税額控除などがありますので、法定相続人を増やす事に過度な節税効果は期待しない方がいいでしょう。
法定相続人が3人の時の相続税の総額 | 5720万円 |
---|---|
法定相続人が4人の時の相続税の総額 | 5080万円 |