遺言は相続財産の分配に関して法定相続分よりも優先されると言う非常に効力の強い文書ですが、だからと言って遺言を筆記する回数が定められているわけではありません。極論を言えば毎日書き直しても構いません。

しかしその場合には前の遺言と後の遺言の内容が一致しないケースが出てきます。一致しない場合には、一致しない部分については前の遺言を撤回したものとみなされますので、後の遺言が有効となります。

また、撤回される遺言と撤回する遺言は同じ証書である必要はありませんので、はじめに公正証書遺言にした場合でも後から自筆証書遺言で書き直す事が出来ます。但し、法律に定められている方式に従って撤回を行わなければ、撤回の遺言書は無効となります。

遺言の撤回ルール
  • 撤回の遺言書も一定の条件に従って記述する必要がある。
  • 内容が一致しない部分は後の遺言が有効になる。
  • 遺言内容は撤回する部分だけを記述すればよい。
  • 撤回をする場合の遺言方式は、前の遺言方式と同じである必要はない。

また、遺言者が遺言による遺贈の目的物を故意に破棄した時にも、遺言者が遺言を撤回しようとした意思表示を推認する事が出来るので、撤回したものとみなされます。

遺言の撤回権は放棄ができません

遺言の撤回権は放棄できない事になっているので、遺言者がこの遺言は撤回しないと言ったとしても遺言の撤回は可能です。

遺言書を取り消す方法

何らかの事情で遺言書を取り消したい時、自筆証書遺言なら破って捨ててしまえば遺言の存在を消滅させる事が出来ますが、公正証書遺言や秘密証書遺言の場合には、正本を破棄したとしても公証役場で遺言の原本が保管されているので、結局遺言を取り消した事にはなりません。

その場合には、遺言を取り消す旨を記した撤回の遺言書を作成する必要があります。