定率法は定額法に比べると減価償却費の計算方法が複雑ですが、早めに大きな額を減価償却費として必要経費に計上できるので、将来に残るリスクを小さくする事が出来ます。

財務の健全性という観点から見ても定額法よりは定率法の方が好ましい為、一般的には定率法が採用されています。

但し、平成19年4月1日を境にして減価償却できる割合が異なりますので、資産を取得した期間によって減価償却費の金額や減価償却完了までの期間が異なります。

ここでは、平成19年3月31日以前のものには旧を、平成19年4月1日以後のものには新を付けて分かりやすく解説します。

新定率法の減価償却のイメージ

新定率法の減価償却の計算方法はとても複雑ですが、要点さえ押さえておけば加減乗除で計算する事が出来ます。

新定率法による1年度あたりの減価償却費の計算をする時の要点
  1. 償却率、改定償却率、保証率を減価償却資産の耐用年数等に関する省令(ページ下部)で確認する。
  2. 保証基準額を[資産取得額×保証率]で計算する。

例えば、平成26年4月1日以後に100万円で軽自動車を購入した場合、軽自動車の耐用年数は4年なので、償却率は0.5、改定償却率は1、保証基準額は12万4490円となります。

これらの数値が分かれば、あとは毎年度ごとに調整前償却額と残存耐用年数の均等償却額を計算をしていきます。

調整前償却額の計算式
調整前償却額=未償却残高×償却率
残存耐用年数の均等償却額の計算式
残存耐用年数の均等償却額=未償却残高÷残存耐用年数

調整前償却額の方が多い時には、調整前償却額を減価償却費として計上する事が出来ます。残存耐用年数の均等償却額の方が多い時には、残存耐用年数の均等償却額と保証基準額に改定償却率を乗じた金額のどちらか多い方を減価償却費として計上します。

減価償却費は1円を残す決まりになっているので、最後の減価償却費からは1円を差し引いて計上します。

100万円で購入した軽自動車の新定額法による減価償却イメージ
計上年度 残存耐用年数 未償却残高 調整前償却額 均等償却額 減価償却費
1年目 4年 100万円 50万円 25万円 50万円
2年目 3年 50万円 25万円 16万6666円 25万円
3年目 2年 25万円 12万5000円 12万5000円 12万5000円
4年目 1年 12万5000円 6万2500円 12万4999円 12万4999円
合計償却額 99万9999円

旧定率法の減価償却のイメージ

旧定率法は新定率法よりも計算が容易で、償却率は関数電卓があれば算出できます。関数電卓が手元にない場合は、無料のスマートフォンアプリやWEBアプリで代用する事も出来ます。

旧定率法による1年度あたりの減価償却費の計算をする時の要点
  1. [1÷耐用年数]でAを計算する。
  2. [1-(0.1のA乗)]で償却率(※1)を計算する。
(※1)小数点以下4位を四捨五入するので、[0.43765…]の場合には[0.438]となります。

100万円で軽自動車を購入した場合、軽自動車の耐用年数は4年なので、[1-(0.1の0.25乗)]をすると償却率は0.438となります。

償却率が分かったら、減価償却費として計上できる金額を計算する為に次にあげる2つの計算を行います。どちらか少ない方の金額を減価償却費として必要経費にする事が出来ます。

旧定率法による1年度あたりの減価償却費の計算式
1年度あたりの減価償却費=
①と②のどちらか少ない方の金額
①=未償却残高×償却率
②=未償却残高-(資産取得金額×5%)

未償却残高が資産取得金額の95%以上になった場合には、残りの未償却分を5年に分けて計上します。最後の年度は1円を残して計上します。

100万円で購入した軽自動車の旧定率法による減価償却イメージ
計上年度 未償却残高 減価償却費
1年目 100万円 43万8000円 95万円 43万8000円
2年目 56万2000円 24万6156円 51万2000円 24万6156円
3年目 31万5844円 13万8339円 26万5844円 13万8339円
4年目 17万7505円 7万7747円 12万7505円 7万7747円
5年目 9万9758円 4万3694円 4万9758円 4万3694円
6年目 5万6064円 2万4556円 6064円 6064円
7年目 5万円 1万円
8年目 4万円 1万円
9年目 3万円 1万円
10年目 2万円 1万円
11年目 1万円 9999円
合計償却額 99万9999円

旧定率法の場合は、減価償却が完了するまでの期間が新定率法よりも6年長くなります。