退職金には通常の給与所得の時と同様に、退職所得額に応じて所得税が課せられます。
ただし退職金と言うものは長い年月を掛けて得られる所得であり、老後の大切な生活資金になるという性質がありますので、給与所得の所得税計算では加味される事の無い勤続年数が加味されるような計算式になっています。
退職所得税額の計算方法
- 退職所得税額の計算式
-
退職所得税額=
A.課税退職所得額×B.所得税率
退職所得税額は課税退職所得額に所得税率を掛ける事で求められますが、課税退職所得額を導き出すには特定の計算式に従って算出しなければなりません。
課税退職所得額の計算方法
- A.課税退職所得額の計算式
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課税退職所得額=
(①退職金額-②退職所得控除額)×③税率50%または100%(※1)
(※1)勤続年数5年以下の会社役員の方はここの数値が100%ですが、それ以外の方は2分の1課税が適用されますので50%となります。
①の退職金額にはそのまま退職金額が当てはまりますが、②の退職所得控除額につきましては勤続年数に応じて控除額が増減しますので、計算式によって求めるか退職所得控除額の早見表で確認をして下さい。
もし退職金額よりも退職所得控除額の方が多ければ、退職金に対して課税されることはありません。
退職所得控除額の計算方法
退職所得控除額は、勤続年数が2年までは一律80万円で、3年~20年までは40万円×勤続年数で計算されますが、それ以降は毎年70万円ずつ控除額が増えていきます。
- ②退職所得控除額の計算式
勤続年数2年まで - 退職所得控除額=一律80万円
- ②退職所得控除額の計算式
勤続年数20年まで - 退職所得控除額=40万円×勤続年数
- ②退職所得控除額の計算式
勤続年数21年~ -
退職所得控除額=
800万円+70万円×(勤続年数-20年)
勤続年数 | 退職所得控除額 | 勤続年数 | 退職所得控除額 |
---|---|---|---|
2年以下 | 一律80万円 | 33年 | 1710万円 |
3年以上20年以下 | 40万円×勤続年数 | 34年 | 1780万円 |
21年 | 870万円 | 35年 | 1850万円 |
22年 | 940万円 | 36年 | 1920万円 |
23年 | 1010万円 | 37年 | 1990万円 |
24年 | 1080万円 | 38年 | 2060万円 |
25年 | 1150万円 | 39年 | 2130万円 |
26年 | 1220万円 | 40年 | 2200万円 |
27年 | 1290万円 | 41年 | 2270万円 |
28年 | 1360万円 | 42年 | 2340万円 |
29年 | 1430万円 | 43年 | 2410万円 |
30年 | 1500万円 | 44年 | 2480万円 |
31年 | 1570万円 | 45年 | 2550万円 |
32年 | 1640万円 | 46年 | 2620万円 |
課税退職所得税率
B.所得税率には課税退職所得に応じた一定の税率を代入します。
課税所得額 | 所得税率 | 課税所得控除額 |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円超330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円超695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円超900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円超1800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1800万円超 | 40% | 2,796,000円 |
退職所得にかかる所得税は確定申告しなければならないのか?
退職する前に会社に「退職金所得の受給に関する申請書」を提出しておけば、会社の方で退職金にかかる所得税を計算して源泉徴収してくれますので確定申告をする必要はありません。
しかしこの申請書を会社に提出していない場合には、退職金の支給時に一律20%の所得税が源泉徴収される事になっています。
この場合は所得税の不足分があれば確定申告をしなければなりませんし、所得税の還付を求めるにしても確定申告をしなければなりません。
また年末調整の時に申告出来なかった所得控除がある場合や、退職後に支払った保険料がある場合は、確定申告をする事で所得税の還付を受けられる可能性が出てきます。
退職後に事業を始めて赤字が出た場合や株の売買で損失が出た場合には、確定申告によって退職所得と損益通算をする事が出来ます。
同じ年に2つ以上の会社から退職金を貰った場合
普通のサラリーマンではあまりこういった事はありませんが、同じ年に2つ以上の会社から退職金をもらった場合は、先に受け取った方の退職金の源泉徴収票を後で退職金をもらう方の会社に提出する必要があります。