マイホームの購入資金は夫婦それぞれが協力して負担する事がありますが、この時に夫の単独名義にした場合には妻の資金負担分は夫への贈与になってしまいます。
贈与になると税金が高くなるケースが多いので、贈与にしないようにする為にはマイホームの名義を共有名義にする必要性が生じます。共有名義にするには、マイホームの所有権を登記する際に、資金負担の割合に応じてそれぞれの持ち分を分割します。
マイホームを共有名義にすると、資金に対する贈与税負担を避けられる他、住宅ローン控除を夫婦で受けられるようになると言ったメリットがあります。
その反面で、夫婦が離婚した場合などには紛争に発展しやすいと言う問題もありますので、共有名義には十分な検討が必要です。
- メリット
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- 夫婦それぞれが住宅ローン控除を受けられる。
- 夫婦それぞれが3000万円特別控除を受けられる。
- 相続税の対象が亡くなった人の持ち分で済む。
- デメリット
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- 離婚時に所有権やローンの負担が問題になる事がある。
- お互いの同意がないと売却できない。
夫婦それぞれが住宅ローン控除を受ける時のメリット
マイホームの所有権を夫婦の共有名義にした場合には、夫婦それぞれのローンに対して住宅ローン控除を受けられるようになります。
夫婦それぞれで住宅ローン控除が受けられるメリットは、納めている所得税額によっては還付金が増える可能性があると言う事です。
一例として、夫の所得税額が30万円の場合には、住宅ローン控除が40万円あったとしても受けられる還付金は30万円までとなります。
しかし夫婦それぞれのローン割合で住宅ローン控除を受ければ、住宅ローン控除の上限いっぱいまでを還付金として受け取る事も可能です。
所有名義 | 単独名義 | 共有名義 | |
---|---|---|---|
夫 | 夫 | 妻 | |
ローン負担割合 | 100 | 70 | 30 |
所得税額 | 30万円 | 30万円 | 15万円 |
住宅ローン控除額(※1) | 40万円 | 28万円 | 12万円 |
税金還付額 | 30万円 | 40万円 | |
(※1)住宅ローン控除額は住宅ローン残高の1%です。 |
夫婦それぞれが3000万円特別控除を受ける時のメリット
マイホームが夫婦共有名義の場合には、マイホームを売却した時の売却益に対して、夫婦それぞれが居住用財産の3000万円の特別控除を受ける事が出来ます。
マイホームが1億円で売れた場合、単独名義にしている方は1億円から特別控除の3000万円を差し引いた7000万円が課税対象となりますが、共有名義にしている場合には持ち分割合に応じたそれぞれの売却益から3000万円ずつ差し引けますので、上手くいけば売却益から6000万円を差し引いた4000万円を課税対象にする事が出来ます。
所有名義 | 単独名義 | 共有名義 | |
---|---|---|---|
夫 | 夫 | 妻 | |
持ち分割合 | 100 | 70 | 30 |
売却益 | 1億円 | 7000万円 | 3000万円 |
居住用財産の特別控除額 | 3000万円 | 3000万円 | 3000万円 |
課税対象額 | 7000万円 | 4000万円 | 0円 |
合計課税対象額 | 7000万円 | 4000万円 |
マイホームを夫婦で共有名義にした時のデメリット
マイホームを夫婦で共有名義にしている場合には、それぞれに所有権を行使する権利がありますので、離婚など財産分与の為にマイホームの売却をしたくても、一方が売却したくないと主張すれば売る事は出来ません。
また、財産分与の為にマイホームを売らないとしても、所有権や残りのローンをどちらがどれだけ引き受けるのかと言った問題が発生する事もあります。
このように、マイホームを共有名義にしている夫婦が離婚する場合には色々な問題が生じますので、トラブルを回避する為にも所有名義について資金計画の段階で慎重に検討する必要があります。
持ち分割合は正確に決めないと贈与になるケースがある
夫婦だから持ち分割合は平等に半分半分にしようと安易に決めてしまうと、正しい持ち分割合との差が贈与になる事もありますので、持ち分割合を決める際には注意が必要です。
例えば、3000万円のマイホームの頭金として妻が1000万円を出して夫が残りの2000万円のローンを負担した場合は、夫と妻の持ち分割合は2:1になります。
これを1:1にしてしまうと、夫から妻へ持ち分を贈与したと判断されても文句は言えません。今回のケースで言えば、差額の500万円が贈与税の対象になる可能性があります。